カナリヤ

サスペンスだと思っていた……その映画は、

こともあろうに、ラブストーリーもどきだった。

 

別々に見るつもりが……なぜか?

その女性と並んで座っている……俺がいた。

 

すべてはあのずーずーしい、バカ猫の仕業だ!

 

 

なんと……カナリアのやつは、

その名もしらぬ妻の亡霊さんに……ベッタリとくっつき、

彼女の膝を……新しい領土としているのだ。

 

なんとけしからん事か!

腹立たしい限りだ!?

 

いくら妻に似ていても、所詮は他人!

俺を愛してくれるわけでは……ない。

 

 

ともかく、

この女性にとっても、迷惑にちがいない。

早めに切りあげて、解放してあげなくては……。

 

 

そうこう考えている内に、

くだらない映画は……終わってしまっていた。

 

それでも、迷惑な猫は……その女性を離さなかった。

なんたる事か……?

まさに……悲劇ではないのか?

これは……?

 

あつかましすぎるぞ、カナリア!

 

怒れる俺を見透かすかのように……微かに笑う猫の瞳。

 

 

ところが、

泣き虫のはずの幽霊さんは……以外にも……

微笑み始め……その笑顔は……悔しいほど……

懐かしい香りがする。

 

俺はあえて……カナリアの陰謀に乗る他なかったのである。

 

 

結局、夕食にデザート。

夜景のステキなデートスポットまで、

エスコートするはめになった俺は……やはり間抜けだろうか?

 

 

それはさておき、

ひさしぶりに楽しい夜を過ごしたことだけは……

よかったのかも……しれないなあ。

 

本当に……?

そう……言えるのか??

 

 

罪深い自分には……あるまじき行為かも……

しれないが……。

 

 

                 9p

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