プロローグ0

     「闇/始動」1

         著作 KATAKANA
   

その闇は……
尋常な闇では……
到底ありえなかった。

額から滲み出た汗は、
まるでナイフの刃の様に
俺の肌に痛みを残した。

すでに30℃を突破して
いるはずの外気温は、
この状況下の中では
無に等しかった。

いや……
確かに熱いと感じている
はずなのだが…
俺の肌は恐ろしい程の
寒さを訴えている。

何も無い空間。
何も見えない空間。

俺の喉から絞り出される
荒い息使いが、
信じれれないくらい
大きく自分の耳に届く。
息苦しくは無い。
……ただ、息苦しいと
心が感じているだけだ。

『もし、ここがホントに
空気の薄い場所だったら……
俺はとっくにあきらめていた
だろうな……?』

ふっと思う。
苦しまなくてすむだけ、
まずは助かったと
言う所だろうか……?

だが……動けない。

身体は、自由を奪われて、
硬直したまま
石になっている。

「ひ~ッ!!」

鈍く倒れる音と供に、
絞めるようなこだまが響く。
身を堅くする俺の耳に、
すべての感覚が集った。

『ずり……ズズズリ……』

何かが……? 
何者かが、無気味な音と供に、
俺達に……俺の友人達に
迫りつつあった。

俺と彼等との位置は、
この状況下ではわからない。

でも、
今の声から推定すると……?

「たっ、卓也~!」

この声は直樹だ。
多分……2Mも
離れていない距離に
居るはずだ。

『ここだ!!』

俺の唇が動いた。
でも…声が出ない。
そればかりか気ずくと、
どんどん……
総ての感覚が消え
失せようとしていた。

生きていると言う感覚……?
今こそ重要な感覚が……
水を流すように薄れ、
無くなりつつあった。

『だめだ!』

自分にやがて降り
掛かって来るハズの、
例え様も無い恐怖が、
毒針の様に身体の中を巡った。
ついさっきまで、
生きようともがいていた
自分の心が、
足下から崩れて行く。

…逃げたい…

衝動的に、
今の恐怖から逃れられるための
手段を計算しはじめる。

でも……
逃れるすべは浮かんでこない。

浮かんでくるのは……
死という言葉だけ……?!

なんて……
なんて……短絡的な
頭脳なんだ……?
俺のは……!?

でも……でも……?

 

「闇/始動」1……
 続く……?!

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「闇/始動」1
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